
戦略コンサルへの転職経験から、実際に面接で出た(出ると言われている)フェルミ推定・ケース面接の問題と、その回答方法や面接官に突っ込まれた時の返答例をまとめています。
今回は「東海道新幹線の1日のコーヒーの売上」です。
目次
このお題について
PwCやBCGで出ることがあると言われています!
私が受けたときは出ませんでしたが、過去問を見ると割と頻繁に出ていたような。
PwCやBCGを受ける予定の方はもちろんですが、割と良問(だと勝手に思っている)ので、フェルミ推定の練習がしたい方にもおすすめです。
難易度(3段階):★★☆
少し抜けやすいポイントはありますが、
一度練習しておくことで対策可能だと思います!
本記事の特徴
1.実際の戦略コンサルの面接で出たことのあるお題を使用
⇒今後も出る可能性の高いお題を練習できる
2.戦略コンサル転職経験者が回答例を記載
⇒面接を突破するためにどの程度の回答でよいかわかる
3.面接官から良く突っ込まれるポイントとその返し方を記載
⇒面接官とのディスカッションの準備ができる
※実際の面接の通過状況から、3が一番重要だと感じています
カラクリ(初代管理人)プロフィール
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総合コンサルファームに5年間勤務
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戦略ファームへの転職活動の経験もあり
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自身の経験を基にしてコンサル未経験者がコンサルファームに転職するためのブログ『カラクリブログ』初代管理人
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現在は中小企業コンサルとして独立(準備)中
本記事を活用した面接の練習方法
1.指定した時間で回答を考えてみる
※わからなくてもとりあえず答えを出すことが、上達の上でも、実際の面接対策の上でも重要です
2.筆者の回答例と比較する
3.面接でよく聞かれる質問を確認し、自分ならどう答えるか考える
4.筆者の回答例と比較する
なお、そもそものフェルミ推定が全くわからないという方は、まずこちらの『【まとめ|例題と解答付き】フェルミ推定とは?やり方や考え方は?』を読んでください。
知識ゼロの状態からフェルミ推定の面接を突破できるようになるまでの対策をまとめています。
お題再掲
では、お題を再掲します。
東海道新幹線の1日のコーヒーの売上(7分)
参考になると思いますのでぜひ読んでみてください!
計算ロジックと計算結果
【初心者必見】フェルミ推定の5つの手順【例題あり】の記事に書いてあるように、フェルミ推定は以下のステップで考えます。
今回のお題も同じステップで考えます。
1.前提確認
お題の前提や言葉の定義を確認します。
具体的には、お題の範囲(世界or日本or東京など)や期間(1年間or1日など)です。
今回で言えば、東海道新幹線の東京~名古屋間で、1日ですね。
平日・休日どちらでもいいと思いますが、今回は平日とします。
なお、面接官によっては、なんで平日なの?と聞いてくる方もいます。
「平日の方が日数が多く、年間売上に与える影響が大きいため、まずは平日の売上を算出しようと考えた」など、何かしら応えられる理由を考えておきましょう。(休日を選択した方も同様です)
ちなみに、前提条件は面接官から教えてもらえることが多いので、そこまで重要ではないです。
ただ、別の意味で重要なステップです。
それはこのステップの間に、続きの基本式の設定やセグメンテーションを考えられることです。
このステップは、面接中においては、時間を計り始める前に行います。
私はそこまで頭の回転が速い方ではないので、この前提確認の時間をうまく利用して、この後の基本式の設定やセグメンテーションの候補を考えていました。
私みたいに頭の回転の速さにそこまでの自信がない方は、時間稼ぎ的にお題の範囲(あのJR東海の新幹線ですよね?)や期間(平日か休日の指定はありますかね?)を聞くのもアリだと思います。
2.基本式の設定
今回は東海道新幹線の1日の売上。
フェルミ推定にはパターンがある!頻出3+1パターンを解説の記事に掲載した下記の基本式の正解パターンのうち、「稼働率型」に該当します。
ですので、基本式は以下の通りになります。
■基本式(変形前)
ベース×稼働率×回転数×時間×単価
この式を今回のお題に合わせて変化させていきましょう。
なお、このお題は、基本式を変形するこのステップが一番難しいです。
抜けが発生しやすいからです。
実際に考えてみましょう。
東海道新幹線のコーヒーの売上ですので、今回のベースは東海道新幹線の席数とします。
■基本式(変形後①)
東海道新幹線の席数(席/時間)×稼働率(%)×回転数(回)×時間(時間)×単価(円/杯)
あれ?これにコーヒーの単価をかけるのは何か違和感あるな?
って気づきましたかね?
そう、この式だと東海道新幹線に乗った人がみんなコーヒーを購入することになりますね。
ですので、さらに式を変形します。
■基本式(変形後②)
東海道新幹線の席数(席/時間)×稼働率(%)×回転数(回)×時間(時間)×コーヒー購入率(%)×コーヒー購入数(杯/人)×単価(円/杯)
いったん、コーヒー購入数も式に入れましたが、さすがに東京・名古屋間で2杯買う人はいない、という前提のもと、式自体から外してしまっても問題ありません。
よし!これで漏れがないから次のステップに入ろう!・・・あれ?席数ってどうやって出すんだ?
ってなりますよね。
ここもさらに分解していく必要があります。
■基本式(変形後③)
東海道新幹線の本数(本/時間)×1本あたり車両数(車両/本)×車両あたり席数(席/車両)×稼働率(%)×回転数(回)×時間(時間)×コーヒー購入率(%)×コーヒー購入数(杯/人)×単価(円/杯)
ここまでくるとだいぶイメージが湧くのではないでしょうか?
以上で基本式の設定・変形は終わりです。
そうとう項の数が多くなりましたね。
抜け漏れが無いように丁寧に分解していきましょう。
(と言っても、ここまで多くなるとつい抜けちゃうんですけどねっ)
ちなみに、人によっては、変形後の基本式を最初から導出できる人もいるかと思いますが、私は得意ではないので、このように一度変形前の基本式を(頭の中で)挟むようにしています。
3.セグメンテーション
続いてセグメンテーションです。
どこまでセグメンテーションするかは、回答時間に応じて考えます。
今回は7分ですが、割と項が多いので、3セグメントくらいを目安に切り口を考えます。
切り口は、日頃の経験と一般的な切り口を両睨みしながら考えていきます。
今回の私の思考回路は次の通りです。例によって思考回路そのまま書いているので、読みにくいですがご容赦をww
・新幹線ってどんな人が乗るっけ?遠出する人だから観光客?あ、平日だからビジネスマンが多いか。
・ビジネスマンってなると通勤・出張で朝とか夜に乗る人が多いんだろうな。
・車両数と席数は時間固定かもしれないけど、本数、稼働率、回転率は時間による影響が大きそうだな。
・コーヒー購入率は、、、好き嫌いは関係するだろうけど、他の項には関係ないだろうし、この切り分けは微妙だな。
・やっぱ朝の方が眠気覚ましに飲む人増えるかな。あと、夜だとお酒飲みたい人が多いだろうし、コーヒー買う人は少なくなりそう。
・やっぱ軸は時間軸かな。他には、、、性別軸は筋悪そう。こだま、ひかり、のぞみで分けるのもありだけど、時間軸の方が軸ごとの違いがはっきり出て筋が良さそう。あと、年齢も少し関係しそうだけど大きくは関係しないかな。
・よし! 時間軸で計算しよう!
このような思考プロセスを経て、今回は時間軸で切り分けます。
個人的には切り口を考える段階で、上記のように幅広く思考(妄想?)しておくことをオススメします。
次の「4.数値の設定・計算」において、数値を設定する時の根拠になるからです。
そしてなによりも、面接においては、フェルミ推定だけで終わることは少ないです。
だいたいこの後に「売上を伸ばすためには」とか「販売数を伸ばすためには」といったケース問題に繋がります。その方向性を考えるきっかけになります。
しかも考える時間を確保してくれない時が多いので、あらかじめざっくり考えておくことが重要です。
以下に、セグメンテーションを終えた表を貼り付けます。
(普段より項が多いのでちょっと字が小さいかもです。。)
今回は、特に利用が多いと想定されるビジネスマンの行動が一つのポイントになるので、通勤時間を意識して3つのセグメントに切り分けました。
ちなみに、セグメンテーションにありがちな失敗例とその対策はフェルミ推定のセグメンテーション【失敗例と回避方法】にまとめています。
セグメンテ―ションが上手くできない方はチェックしてみてください。
4.数値の設定・計算
続いて数値の設定・計算です。
正直、日本人口や世帯数など、基本的な数値を除いて、他の数値はほぼ感覚値です(笑)
ただし、なぜその数値にしたのかの理由はしっかり考える必要があって、「〇〇が理由だから、だいたい(感覚的に)これくらい」といった回答が必要です。
”感覚的に”を良い感じで表現するために、
・〇人あたり〇人は使用しているイメージ
・小学校のクラスで〇人は持っている感覚
などの自身の経験と結びつけたロジックを使います。
なお、私は下記の7つの基礎数値しか覚えておらず、あとはその場で推定しています。
詳しくは【暗記不要】フェルミ推定の基礎数値一覧【超簡単:7つのみ】にまとめていますので、チェックしてください。
ではそれぞれの数値を当てはめていきましょう。
なお、今回の数値はコロナ前として設定しています。
コロナ中であっても考え方は一緒ですので、参考になると思います。
■新幹線の本数
朝と夜は通勤とかで移動需要が大きいだろうから、5分に一本程度で12本。
昼は10分に一本程度で6本。
ここで注意が必要なのは、上り(東京方面行)と下り(名古屋方面行)があること。
上りも下りも同数として、2倍してそれぞれ24本と12本。
■車両数
ここは記憶を頼りにする。
確かグリーン車両は中央くらいに位置していて、7号車くらいだったので、その2倍程度の15車両とする。
車両数は時間帯によらず変化なし。
■席数
席数も記憶を頼りに。
1列あたりの席数は5席。
20列くらいはあったはずなので、計100席。
時間帯によらず変化なし。
■稼働率
朝:
通勤需要でほぼ埋まっていると想定。
1列あたり、4席利用(3席シートの真ん中だけ空いてるやつ)と5席フル利用が半々くらいと考えて、稼働率90%。
昼:
通勤需要はそこまで高くないと想定。
観光客が少しいると考えられるが、いずれにせよそこまで需要は高くないと考えて、1列あたり、1席利用と2席利用が半々くらいと考えて、稼働率30%。
夜:
朝と同様、通勤需要でほぼ埋まっていると想定して、稼働率90%。
■回転数
朝:
通勤する人は、小さい駅でも会社があれば降りる気がする。
2人に1人は途中下車&途中乗車するとして、1.5回転。
昼:
観光客は名古屋、新大阪、、東京圏内などの大都市間を移動する人が多いと想定。
5人に1人は途中現社&途中乗車するとして、1.2回転。
夜:
朝と同じ考え方で1.5回転。
■時間
ここはセグメントに従い計算。
朝:6時〜9時の3時間
昼:9時〜18時の9時間
夜:18時〜23時の5時間
■購入率
朝:
朝はコーヒー飲む人が多いと想定。
5列に1回くらいコーヒー購入者がいるイメージ。
単純に100席(20列)で4回なので4%。
昼:
昼もコーヒー飲む人は一定数いるとは思うが、朝と比べて時間に追われていない。そのため、乗車前にコーヒーを購入してくる人も多いと思われるので、朝より購入率は少なく、半分の2%と想定。
夜:
仕事帰りのサラリーマンはお酒を飲むことが多いと考えられる。カフェインで夜眠れなくなることを気にする人も多いことから購入率は少ないと想定。
1台(100席)で1回購入される程度として1%。
■購入数
東京・名古屋間であれば、時間的にはかかっても2時間程度と思われるので、購入しても1杯かなと。
時間帯によらず1杯とする。
■単価
スタバとかが300円台。そんなにコーヒーに力を入れているわけではないと思うので、スタバより安い300円と設定。
以上を計算すると、2.7百万円(端数を端折りつつの計算)になりました。
計算を終えた表を掲載します。
面接であれば、残り時間は、計算ミスの確認と、突っ込みポイントへの返答を考えます。
実際の数値と振り返り
ヤフーニュースの記事に東海道新幹線のコーヒーの販売数が載っていました。
2021年4~6月期のデータで、1日約4,500杯(ホット:約3,300杯、アイス:約1,200杯)売れているとのこと。
コロナ前はこの3倍とのことですので、3倍のうえ、単価300円をかけると、3.8百万円になります。
今回フェルミ推定した区間は名古屋〜東京までと、東海道新幹線全体(新大阪〜東京)よりも短いので、2.7百万円は悪くない推定結果に思います。
ただ、フェルミ推定はあくまで思考過程を見るものですので、実際の数値と近さは、面接の評価にそこまで関係ありません。
個人的には桁が同じであればほぼ問題ないかなと思っています。
さて、振り返りですが、今回は、基本式の設定が難しかったです。普通に漏れがでます。
過去に何名かの方に面接サポートをした方にこのお題を出題したことがあるのですが、みなさん項に漏れがありましたね(笑)
あと、数値設定でちょっと難しいかなと思ったのは、コーヒー購入率ですね。
今見てみると、朝の購入率4%は高すぎる気がします。
ざっくり、各号車で4人も購入することになりますので。
もうちょっと改善の余地はあるかなという感じです。
面接でよく聞かれる質問と返答例
最後に面接でよく聞かれる質問と返答例です。
個人的な感覚として、ここまでのロジックについては、大外れしていなければ、そこまで重要視されていない印象です。
むしろ、ディスカッションでどれだけ返答できるかを見ているように感じます。
ちなみに、よく突っ込まれるポイントとその返答方法は、フェルミ推定の面接対策:面接官の突っ込みポイントへの回答方法にまとめてあります。
気になった方はチェックしてみてください。
①推定結果は妥当か?
今回のお題は妥当性を示すのが非常に難しいですね。
新幹線の利用者数という市場と、コーヒー市場が掛け合わされたような式になっている(市場規模から妥当性を示すのが難しい)ことや、社内販売の一つの商品でしかない(コスト面から妥当性を示すのが難しい)ことが要因だと思います。
しかし面接で聞かれたらわからない、できないとは答えがたいので、私であれば、まずは以下の説明をして、面接官の様子を見ながら凌ぐと思います。
販売カートに乗るコーヒーポットの大きさから考える
■回答例
販売カートのコーヒーポットの大きさは、アイス・ホットいずれも2Lくらいかと思います。
東京名古屋間で3回分のコーヒーポットを消費するとすると合計12Lです。
1杯あたり300mLとすると、40杯分ですので、12,000円となります。
これに新幹線の本数(約350本)をかけると、4.2百万円となります。
二つの方法で算出した推定結果が近い値になったことから、妥当性は高いと考えています。
②他にどのような計算式を考えたか?
①と似ていますが、こちらの意図としては、
「他にも計算式が考えられたにも関わらず、なぜその式で計算したのか?」ということです。
有名なディズニーランドの入場客数の問題においては、
ゲートを通った人の数で考えるか、舞浜駅に来る電車と駐車場のキャパシティから考えるか、はたまた日本人の利用率・利用頻度から考えるか、などです。
今回のお題ならば、以下のように回答すると思います。
他に東海道新幹線の改札を通過した人のうちコーヒーを購入する人の割合で考える方法があると思います。
ただ、この方法だと、駅の数や、各駅の改札の数がぶれやすいと考えたので、既に説明した方法にしました。
もちろん①で考えたコーヒーポットの容量から考える方法でもいいと思います。
③より精度を上げるにはどうすればよいか?
振り返りでも書いたように、購入率をよりうまく設定できると精度が上がると思います。
ですので、面接本番で聞かれたら以下のように回答すると思います。
今回の数値の中ではコーヒー購入率が最もぶれやすいと考えています。
この精度を高めるために、商品購入率×コーヒー選択率にさらに分けて計算するとより精度が上がると考えています。
あとは、セグメンテーションのところに少し書きましたが、のぞみ・ひかり・こだまでさらに分けてもいいかもしれません。
それぞれ停まる駅数が異なりますし、乗客数に効いてくると思います。
以上、いかがでしたでしょうか?
最後までお読みくださりありがとうございました!
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また、他にもフェルミ推定の例題を解説していますので、気になった方は是非確認してみてください!
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