最強の業務改革って本があるけど、これって役に立つの?今度業務改革を担当することになったから知りたい!
『最強の業務改革』は下記の本です。本書について解説します。
本記事の内容
本記事を書いている私は、新卒でコンサルティングファームに入社し、今年で5年目です。
これまでに自動車メーカーや建設業などの業務改革を担当してきました。
今は少し慣れてきたものの、初めて業務改革系の案件に配属されたときは、不安でした。
業務改革って、そもそもその業務担当したことないし、できる気がしない・・・
みたいな。
そのため、みなさんと同様、あらかじめ勉強しようと業務改革系の書籍を探して読みまくりました。
しかし、業務改革系の本は会社の宣伝として出版されているものが多いです。
良書に出会うまでにたくさんの本を読み、多くの時間を費やしてしまいました。
本記事では、今後業務改革を勉強する方が不要な時間を費やさないよう、実際に業務改革を担当した私がオススメする『最強の業務改革』を紹介します。
目次
『最強の業務改革』は実務に役に立つのか
社内の業務改革を担当することになった方と、コンサルタントとして、初めて業務改革を担当する方のそれぞれに役に立つのかどうかを解説します。
社内の業務改革担当者にとって役に立つのか
結論:あんまり役に立ちません・・・
社内の人からすると具体性が足りないからです。
本書では、営業・調達・生産などの各業務ごとにありがちな問題点とその解決策がまとめられています。
例えば、本社間接業務改革の問題点の一つとして、属人化が挙げられています。
業務のやり方が個人に依存してしまい、場合によっては非効率になってしまう状態ですね。
その解決策として、「プロセスの見える化と効率化」が挙げられています。
属人的でどんな業務を行っているかわからないので、まずは業務のやり方を可視化した上で、効率化する、ということです。
効率化については、標準化(ばらつきの是正)・清流化(ムダの排除)・IT化(自動化)できる余地がないか検討しましょうと書かれています。
以上です。
みたいになりますよね。。。
もちろん、業務によってはもう少し詳しく記載されているものもありますが、基本的にすぐに実行できるような具体的な記載はありません。
このように、社内の人からするともう少し踏み込んだ具体的な内容が欲しいと思うので、あまり役に立たないのです。
もっと言うと、、、本書はA.T.カーニーの販促ツールだと思います。
本書を読んで具体的に知りたいとなると、A.T.カーニーに問い合わせるしかなくなるので、そこでコンサルサービスを提案しているんだと思います。
そのため、クライアント側からすると少し物足りない内容にして、問い合わせが発生しやすいようにしているんだと思います。
ただ、次章で書くように、コンサルタント側からすると、ある程度役に立ちます。
業務改革コンサルタントにとって役に立つのか
結論:まぁまぁ役に立ちます!
各業務における問題と対策の落としどころをざっくりつかめるからです。
コンサルタントの立場で業務改革を行う時は、現状の問題や解決策案を現場の方にヒアリングして確認することになると思います。
実際に問題ヒアリングを行ったことのある人ならわかると思いますが、よくありがちな問題を把握しておくだけでも、お客さんの話している内容が理解しやすくなります。
例えば、本書では、調達業務改革によくある問題として、
- 調達コスト管理が間接材までしっかり適用されていることが少なく、コスト高につながってしまう
- 調達部門の会社としての位置づけが低い場合が多く、他部門と協働した調達活動が十分に行えない
- 販売予測や生産計画の精度が低く、頻繁に変更されるため、仕入れを行う調達側の負荷が増える
といった内容が書かれています。
こういったありがちな問題をつかんでおくと、お客さんのヒアリングでの発言があいまいであっても、内容を理解しやすくなります。
これは調達の例でしたが、他の業務についても、ありがちな問題点とその解決策がまとめられているので、なかなか役に立ちます。
とはいえ、問題・解決策は記載のものだけではないですし、具体的なところまでは書かれていないので、結局は、社内のナレッジや外部文献のリサーチが必要になります。
そのため、”まぁまぁ”役に立つとしました。
『最強の業務改革』の内容とオススメポイント
続いて最強の業務改革のざっくりとした内容と読むべきポイントを紹介します。
最強の業務改革の概要
著者
戦略ファームとして有名なA.Tカーニー所属の栗谷仁さんが書いています。
栗谷さんは、他にも本を書いており、最強の営業戦略とか最強のコスト削減などがあります。
構成
そもそも日本企業にはなぜ業務改革が必要なのかといったマクロな話から始まります。(コンサルっぽいw)
その後第2章、3章では、MOCというA.T.カーニーのフレームワークを紹介しつつ、業務改革の前にビジネスモデル改革も検討しないといけないよねといった話とビジネスモデル改革の事例が紹介されます。
ちなみに、M:ビジネスモデル変革、O:オペレーション改革、C:キャパシティー最適化です。
本書の内容を正確に言うと、MOCすべてを業務改革と呼んでいます。
そして、4章~11章で、調達、生産などの業務ごとにありがちな問題点・解決策・事例が紹介されています。
位置づけ
すでに書きましたが、正直、A.T.カーニーの販促ツールなのかな・・・という印象を受けます。
- 各業務ごとにありがちな問題点や解決策が記載されてはいるものの、具体的でなく、じゃあどうしたらいいの?については、A.T.カーニーに問い合わせる必要がある
- 付録として業務運営・組織機能の自己診断チェックシートがあるが、診断後の活用方法がほぼ書かれておらず、診断結果をうまく業務改革につなげたい場合は、A.T.カーニーに問い合わせる必要がある
冒頭で宣伝用の書籍があふれている中から良書を紹介すると書いてあるのに、宣伝用じゃねーかwと思われたかもしれません。
確かに、他の販促ツールと思しき書籍は正直ほぼ中身がないのですが、その中で本書は圧倒的に良書です。
さすがA.T.カーニーといったところ。
販促ツールということは、裏を返すとその会社が社内のノウハウをちょっと公開しているということです。
販促ツールであっても、良い内容が書かれているのであれば、どんどん活用しましょう。
最強の業務改革で読むべきポイント
続いて最強の業務改革で読むべきポイントと読まなくてよいポイントを解説します。
最強の業務改革の1章~3章は読み流しでよい
読み流しと書いていますが、場合によっては読まなくてもいいかもしれません(笑)
業務改革の実務を行う上では必要ない内容だからです。
すでに説明したように、1章では、日本企業に業務改革が必要な理由が書かれています。
グローバル化・日本国内の人口減少・IT化などが進展していく中では、業務改革が必要だよね。
それに、業務改革だけでなく、ビジネスモデルの改革やリソース見直しも要るよね、といった内容が書かれています。
1章は、あっそ、くらいでいいと思います(笑)
業務改革という試験科目があれば別ですが、実務を行う上では不要です。
2章は、1章を踏まえ、前述のMOCフレームワークを使って、いわゆる皆さんがイメージする業務改革(O:オペレーション改革)だけではなく、ビジネスモデル改革(M)や、人員規模・構成に見直しをかけるキャパシティー最適化(C)もやらないとだよね、といった話をしています。
3章はその中で特に重要なビジネスモデル改革の事例です。
セブン銀行、DeNA、インテル、日立物流の事例が載っています。
2章と、特に3章は、参考にはなります。
ただ、このようなビジネスモデル改革系の内容を知りたければ、正直言うと事業戦略系の書籍を読んだ方がいいと思います。
ですので、1章~3章は本書で読む必要はないので、読み飛ばしていいと思います。
補足:読む必要はないけど、2章の考え方は重要です。
業務は事業を実行するためのものですので、事業(ビジネスモデル)によって業務が変わってきます。
ビジネスモデルとは、「戦略の一部でありターゲット顧客・消費者に対する提供価値を創出するためのビジネスの仕組み・構造」と捉えてみたい。仕組み・構造が規定できれば、おのずと連動するオペレーション業務の内容が決まってくる。 引用元:最強の業務改革
重要なのは、最後の文。
ビジネスモデルが規定できれば、連動するオペレーション業務の内容が決まってくる。です。
実際、コンサルタントとして業務改革を行う場合は、まず顧客企業の事業内容を理解することから入ります。
顧客・商材・チャネルなどがどうなっているか?とか顧客企業の競合との差別化要因は何か?です。
この話に関連して、この前、社内で業務改革案件をよく担当している先輩から面白い話を聞きました。
その方はキャバクラが大好きなんですが(笑)、キャバクラにも実は2種類あるとのこと。
- 一つは可愛い女の子や気の利く女の子を採用して個人のスキルを武器に顧客を獲得するキャバクラ
- もう一つは女の子の容姿・スキルはそこまでではないけど、みんなで協力して店舗として顧客を獲得するキャバクラ
前者が個人主義、成果主義の外資系で、後者が組織で頑張る日系みたいな感じですね。
前者の方は、女の子単位でお客さんがつくので、新規のお客さんを除いてローテーションは少ないとのこと。
また、店の雰囲気としても1対1で話しやすい環境になっているそうです。
一方後者は、指名をしない限りローテーションが多く、店の雰囲気もみんなでわいわい、といった感じなのだそうです。
業務というと、業務フローなどのように、どんな作業をどの順番で行うかをイメージされるかもしれませんが、業務はそれだけではありません。
その業務を行う上での、制度、ITツール、作業環境も含まれます。
その観点で見ると、同じキャバクラであっても、それぞれのビジネスモデルを実行しやすいように、ローテーション業務の制度が異なっていたり、接客業務の環境が異なるといことがわかります。
他にも、外資みたいな前者のキャバクラではお客さん情報を個人で管理していますが、日系キャバクラでは、みんなで共有しているそうで、一度お店に行くといろんな女の子から電話がかかってくるそうです。
先輩はこれをリピート顧客の獲得業務のやり方が異なると表現していました。
キャバクラをこんなに熱く語られたことは初めてでした(笑)
他にもいろいろあったのですが、いずれにせよ、ビジネスモデルに連動して業務が変わってくる、ということです。
最強の業務改革で読むべきは第4章から
業務改革を実務として行うなら4章以降から読むべきです。
すでに述べた通り、業務別にありがちな問題とその解決策が載っているからです。
具体的には、以下の8つの業務について解説されています。
- 本社間接業務改革
- 調達業務改革
- 生産業務改革
- ロジスティクス業務改革
- サービスオペレーション業務改革
- BtoB営業業務改革
- 製品開発とマーケティング業務改革
- R&D業務改革
調達業務改革の章では、解決策の一つとして、「調達部門が上流工程へ関与し、調達仕様を最適化する」という内容が解説されています。
これを本書では、開発購買と呼ばれています。
開発購買として、調達部門が上流の仕様が柔らかい段階から関わることで、調達コスト削減を意識して仕様を決定できるようになります。
実際、過去に調達改革に関わったときに、まさにこの話がありました。
お客さんの社内ではフロントロードという言葉で呼ばれており、どんな意味かな…とヒアリングしながら考えていたのですが、詳しく聞いていくと、開発購買の内容でした。
お客さんの中で固有名詞で呼ばれているものは、説明を求めても、わかりやすい日本語で答えてくれることが少ないです。
そんな中でも早く理解できたのは、本書を読んで開発購買という概念を理解できていたからだと思います。
このように各業務ごとにありがちな問題と解決策がざっくりとわかり、相手の話している内容を素早く理解できるようになります。
そのため、繰り返しになりますが、本書は、その会社特有の単語や業務の知識が少ないコンサルタントに特におすすめです。
最強の業務改革を読んで、実務に役立てよう
いかがでしたでしょうか!?
A.T.カーニーの販促ツールかなと思うこともありますが、それでも十分有益な内容が書かれています。
各業務にありがちな問題と解決策をざっくり知りたいときは、まず本書を読んでみましょう!
なお、他にオススメの業務改革の書籍は、【これだけは読むべし】業務改革オススメ本【用途別に紹介】で解説していますので、ぜひ合わせてチェックしてみてください!