【解説付き】フェルミ推定|例題|中古車の年間販売台数|PwC Strategy&で出題

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本記事は内容に広告・プロモーションを含みます

本記事について

戦略コンサルへの転職経験から、
実際に面接で出た(出ると言われている)フェルミ推定の問題と、
その回答方法や面接官に突っ込まれた時の返答例をまとめています。

前回はミネラルウォーターの市場規模について解説しましたが(記事はこちら)、今回は中古車の年間販売台数です。

このお題について

PwCの戦略部門であるStrategy&で頻出のお題のようです!
本お題は私の面接の際も出ました。
フェルミ推定の値設定で少し雑すぎたところがあり、突っ込まれましたが、何とか通過することができました。実際に突っ込まれたポイントなども交えながら解説できればと思います。

難易度(3段階):★★☆
少し忘れやすいポイントはありますが、
一度練習しておくことで対策可能だと思います!

本記事の特徴

1.実際の戦略コンサルの面接で出たことお題を使用
⇒今後も出る可能性の高いお題を練習できる
2.戦略コンサル内定者(筆者,転職)が回答例を記載
⇒内定するためにどの程度の回答でよいかわかる
3.面接官から良く突っ込まれるポイントとその返し方を記載
⇒面接でのディスカッションの準備ができる
※実際の面接の通過状況から、3が一番重要だと感じています

本記事を活用した面接の練習方法

1.指定した時間で回答を考えてみる
※わからなくてもとりあえず答えを出すことが、上達の上でも、実際の面接対策の上でも重要です
2.筆者の回答例と比較する
3.面接でよく聞かれる質問を確認し、自分ならどう答えるか考える
4.筆者の回答例と比較する
5.俺/私の方が良い回答だ!解説のこの箇所、わかりにくい!などがあればどんどんコメントに書き込む
※コメントいただけましたら可能な限り返信いたします。リアルタイムではないですが、ディスカッションできると思うので、さらに思考が深まると思います。

そもそものフェルミ推定が全くわからないという方はまずこちらの『【まとめ|例題と解答付き】フェルミ推定とは?やり方や考え方は?』ら必要な記事を読んでください。

知識ゼロの状態からフェルミ推定の面接を突破できるようになるまでの対策をまとめています。

お題再掲

では、お題を再掲します。

中古車(4輪車,家庭用)の日本国内の年間販売台数(5分)

以下実際の面接であったやり取りも記載しています。
有料ですが、ぜひ購入してみてください!

計算ロジックと計算結果

以下のステップで考えます。

1.基本式の設定・変形
2.セグメンテーション
3.数値の設定・計算

1.基本式の設定・変形

今回は日本国内の年間販売台数。
このように、マクロな数値を求める際は、需要サイドから算出するのが基本です。
家庭用ですので、今回の需要サイドは個人ですが、自動車は基本的に世帯単位で購入するものかと思います。
ですので、世帯を基準に式を設定します。
今回のような耐久品においては、
保有している人がどれくらいの頻度で買い替えるかを考えます。
そのため、パラメーターは、保有率保有数買い替え頻度です。
式にすると次の通りです。

■基本式の設定(変形前)
日本の世帯数×保有率×保有数÷買い替え頻度

この式を今回のお題に合わせて変化させていきましょう。

ちなみに、思考スピードとしての目安ですが、ここまではまだ面接官からお題を聞いている段階です。時間を計り始める前に基本式は頭に描いておきます。
※人によるかもしれませんが、私の場合は、面接官と会話している間に、「2.セグメンテーション」で使えそうな切り口も複数考えています。もちろん問題の難易度によっても異なります

ですので、時間計測開始と同時に、基本式をどう変化させるか考えるイメージです。

今回の注意点はこの基本式の変換のところにあります。
今回はただの自動車ではなく中古車の市場規模です。
ですので、次のようにパラメーターを一つ追加する必要があります。

■基本式の設定(変形後)
日本の世帯数(世帯)×保有率(%)×保有数(台/世帯)÷買い替え頻度(年/台)×中古車選択率(%)

今回はまだ中古車で気づきやすいですが、新車の販売台数と言われと、中古車の存在を忘れがちになるので、つい最後の選択率が抜けてしまいます。

以上で基本式の設定・変形は終わりです。
ちなみに、人によっては、変形後の基本式を最初から導出できる人もいるかと思いますが、私は得意ではないので、一度変形前の基本式を挟むようにしています。

2.セグメンテーション

続いてセグメンテーションです。
どこまでセグメンテーションするかは、回答時間に応じて考えます。
今回は5分なので、2~3セグメントくらいを目安に切り口を考えます。

切り口は、日頃の経験と一般的な切り口を両睨みしながら考えていきます。
今回の私の思考回路は次の通りです。思考回路そのまま書いているので、読みにくいですがご容赦をww

・自動車は自分が乗らないからよくわからないんだよな。。。
・周りで考えるとファミリー層は車を持ってるような気がする。でも、今ならカーシェアを使う人が増えてるかな。
カーシェアはまだ都会だけ。ん?そもそも、自動車に乗るニーズって移動したいから。その点を考えると、電車とか他の移動手段が発達してるところでは乗る人が少ないか。
「電車やカーシェアサービスなどの、移動需要に対する他の競合の存在」が、都会と田舎で大きく違う気がするので、都会/田舎軸が良い気がする
・他に良い軸はないかな。。。年収も中古か新車かに影響を与える気がするが、都会/田舎軸に比べたらそこまで大きな影響ではない気がする。

このような思考プロセスを経て、
今回は地域軸を都会/田舎で切り分けます。
個人的には切り口を考える段階で、上記のように幅広く思考(妄想?)しておくことをオススメします。
次の「3.数値の設定・計算」において、数値を設定する時の根拠になります。そしてなによりも、面接においては、フェルミ推定だけで終わることは少なく、だいたいこの後に「売上を伸ばすためには」とか「販売数を伸ばすためには」といったケース問題に繋がるのですが、その時の方向性を考えるきっかけになります。
しかもケース問題を考える時間を確保してくれない時が多いので、あらかじめざっくり考えておくことが重要です。
※実際、この時の面接も「ある中古車ディーラーの販売台数を伸ばすためには(思考時間なし)」が出題されました

以下に、セグメンテーションと、3.数値の設定・計算を終えた表を貼り付けます。

セグメンテーション_地域軸

3.数値の設定・計算

続いて数値の設定・計算です。

正直、日本人口や世帯数など、基本的な数値を除いて、他の数値はほぼ感覚値です(笑)
ただし、なぜその数値にしたのかの理由はしっかり考える必要があって、「〇〇が理由だから、だいたい(感覚的に)これくらい」といった回答です。

”感覚的に”を良い感じで表現するために、
〇人あたり〇人は使用しているイメージとか、小学校のクラスで〇人は持っている感覚とか、自身の経験と結びつけたロジックを使います。

・日本の世帯数

全体で5,000万世帯いるとして、都会と田舎にそれぞれ半分ずつとして計算
*「面接でよく聞かれる質問と返答例」に記載しますが、ここのロジックを少し突っ込まれました

・保有率

都会:カーシェアや電車等が発達しているので、保有率は低い。都会のファミリーなど、5世帯に1世帯くらいが保有している感覚で20%。

田舎:通勤含めた普段の移動手段として使うので、保有率は100%

・保有数

都会:保有していても一台。家族みんなで使い回すと想定。

田舎:夫が働いている時に妻が買い物などで使うことが多いと思うので平均1世帯に2台と想定。

・買い替え頻度

都会・田舎関係なく10年に1回と想定。実際、実家の父はこれくらいのペースで買い替えていた。

・中古車選択率

都会:ただの移動需要だけでなく、ステータス的な意味合いで購入する人も多いと思う。新車の方が好まれると思うので、5回に1回ほどが中古車を選択すると想定し20%

田舎:普段使い用に購入することが多いと想定されるため、乗れて移動できれば十分のため中古車を選択する人は多いと想定。2回に1回ほどが中古車を選択すると想定し50%

以上を計算すると、240万台(端数を端折りつつの計算)になりました。
時間を確認すると約3分30秒で算出していました。
*本記事用に解き直した時の時間です。面接中は時間を計っていなかったですが、解き終わってから面接官が声をかけるまで時間があったので、同じくらいの時間で解き終わったと思います。

面接であれば、残り時間は、計算ミスの確認と、突っ込みポイントへの返答を考えます。

実際の数値と振り返り

リクルートマーケティングパートナーズの記事に中古車の販売台数(2017年)の記載がありました。

250.3万台とのことです。
推定結果とだいぶ近い数字になりました。

もちろん、フェルミ推定はあくまで思考過程を見るものです。実際の数値と近かったからと言って面接を通過するわけではありません。
個人的には桁が同じであればほぼ問題ないかなと思っています。

さて、振り返りですが、今回、値の設定を難しく感じた項目はなかった印象です。
ちょっと雑過ぎたかなというのが、都会と田舎の世帯数。
案の定突っ込まれましたので、面接でよく聞かれる質問に記載しようと思います。

面接でよく聞かれる質問と返答例

さて、面接では答えを出して説明して終わりではなく、
そこからディスカッションが始まります。

個人的な感覚としては、ここまでのロジックは大外れしていなければ、そこまで重要視されていない印象です。むしろ、ディスカッションでどれだけ返答できるかを見ているように感じます。

今回は、実際に本お題が出された時に突っ込まれたポイントを中心に、特によく聞かれる3つの質問と返答例を記載します。

1.世帯数を5,000万世帯及び都会・田舎で2500万世帯ずつとした根拠は?

振り返りにも記載した通り、実際の面接で突っ込まれました。

まずこの時はなぜ世帯数が5,000万世帯か、から始まりました。以下、実際のやり取りを記憶の範囲で記載します。

面接官(以降、面)「世帯数5,000万世帯はどうやって出したの?」
「日本の人口を12,000万人とし、一世帯当たり2.5人いるとして5,000万世帯としました」
「その計算で5,000万世帯になる?」
「(しっかりと考えてなくて)端折って計算しましたので約5,000万世帯になりました」

実は、フェルミ推定の時に世帯数を5,000万世帯とするのが、自分の中で常識になってしまっていて、5,000万世帯の算出根拠をちゃんと考えていませんでした。。。とりあえず、端折って計算したと伝えましたが、焦ってしまい、ほんとに5000万世帯付近になるかわからずに回答しています(笑)
いずれにせよ何とか納得してくださってみたいです。

続いて、都会と田舎を按分方法について聞かれます。

「都会と田舎をそれぞれ2,500万世帯としてるけど、この理由は?」
「都会と田舎で人口は同じくらいで、世帯構成も同じとして算出しました。三大都市圏に人口が集中していると言いますし、他に博多・広島・仙台あたりの主要都市を加えると人口の半分くらいにはなると思います。」
「でも、都会って一人暮らしの人とか多いよね?」
「おっしゃる通りですね。今回は簡便化のために都会も田舎も同じ世帯構成としましたが、実際は都会の方が一世帯当たりの人数が少なくなると思います。また、世帯人数によって自動車保有台数が異なると思うので、都会/田舎で切り分けた後に、世帯人数で切り分けるとより精度が上がったと思います。」
「じゃあ簡単にでいいから、都会と田舎で世帯人数が違うことを考慮してもう一度計算してみて」
(以下略)

みたいなやり取りで、この後実際に再計算をしました。

今回の都会と田舎で平均世帯人数が異なることのように、
自分の考慮できていない点を指摘された場合は、私はその指摘を踏まえて、こうするとよかったと答えるようにしていました。
この方式で実際に面接を通過しているので、考慮できていない点は素直に認め、変に(論理性なく)反論しない方が良いのだと思います。

2.買い替え需要だけを計算しているが、新規購入層や買い替え無かった人はどのように考えるか?

耐久品の問題では頻出の質問です。
基本的には、「新規購入層と買い替えなかった人の人数が同等と考えて買い替え需要のみを計算した」と返答すればOKですが、注意点があります。

例を出すと分かりやすいと思うのですが、
同じく耐久品であるスマートスピーカーで同じ返答をするとどうでしょうか?
早い人で2,3年で買い替えるとしても、2020年現在、基本的には新規購入層ばかりなのではないでしょうか?

新規購入層を計算すればよいと思うので、例えば次のような式になると思います。

日本の世帯数×AIスピーカー持ってない率×購入率

購入率が迷いどころだと思いますが、
例えば10年後には10世帯に1世帯は保有するとして1年あたり1%が購入などと理由付けすればよいかと思います。

ですので、実は耐久品問題の基本式は、市場への浸透度に応じて2つに分かれます。

既に市場に浸透している製品(自動車、洗濯機、エレベーターなど)
⇒買い替え需要を計算
まだ市場に浸透していない製品(スマートスピーカー、(際どいけど)お掃除ロボットなど)
⇒新規購入数を計算

じゃあ市場がシュリンクしている場合はどうなんだ?という疑問が湧くかと思いますが、買い替え需要の計算式に買い替え率を加えればよいと思います。
が、実際の面接で出会ったことがないのと、基本式は買い替え需要の変形版であることから、基本式には含めていません。

今回の面接では、実はこの質問は聞かれませんでした。
というよりも、まず聞かれることがわかっていたので、計算式を説明している際に、あらかじめ次のように説明しておきました。

補足までに、買い替え需要だけでなく、新規購入需要や、買い替えない人の存在も考慮する必要があるかと思いますが、今回は、新規購入で増える分と買い替えないで減る分が同一として計算しました。中古車は市場に広くいきわたっている製品だと思いますし、毎年の市場規模の増減はそこまで大きくないと思うので、無視してよいと考えたためです。

3.この推定結果は妥当か?

よく聞かれる&面接官(もしくは会社)によってどこまで深堀してくるかが異なり、個人的には一番答えにくい質問です。
他の計算方法で検算できたら良いのですが、その検算方法の妥当性はどうなのかとなってしまい、やろうと思えば延々と深堀できてしまうためです。

ちなみにこの面接では推定結果の妥当性をものすごく深堀されました。どうやらP社は妥当性をすごい聞いてくる特徴があるようです。

私は、特に良い検算方法が思いつかない場合、
基本的に次の方法で検算していました。

その市場の1社あたりの売上高から妥当性を示す
■回答骨子
この業界の主要プレイヤーは〇社くらいとして、それぞれ〇%くらいずつのシェアを持っているとすると、1社あたり、〇〇円。
大企業の一事業の売り上げとしては妥当だと思います。

今回の面接では次のようなやり取りで進みました。

「この計算結果の確からしさはどのように確かめる?」
「台数を売上金額に直して妥当性を確かめてみます。中古車1台を100万円とすると、金額ベースの市場規模は約2兆5,000億円。中古車ディーラーは3,4社くらいかと思うので、1社あたり5,000億円強かと。市場規模含め金額として大きいですが、日本の中で自動車産業は大きな業界ですから妥当な金額だと思います。」
「その妥当性はどのように確かめたら良いかな?」
「(5秒くらい悩む)」
「何か知ってる数字と比べて確かめてみて。」
「(自動車関係で知ってる数字なんかないわ!)そうですね、確かトヨタ自動車の年間売上が20兆円くらいだったと思うので、その値をうまく使って比較できればと思います。」
「どうやるの?」
「新車と中古車の規模感は桁が一つは違うと思います。トヨタのシェアが20%くらいとすると、新車の市場規模は約100兆円。桁が2つ違っているので、中古車台数はもう少し多いかもしれません。」
「重要な点を忘れてるよ。トヨタの20兆円をそのまま使っていいの?」
「あー確かに、トヨタの事業は自動車の製造販売以外にもカーシェアとかも行っていると思うので、もう少し減らして比較する必要があると思います。」
「いや、もっと規模の大きい金額を忘れている。」
「あ、、海外の売上を除くのを忘れていました。」
「そう。じゃあもう一度検算するとどうなる?」
「海外売上比率ですが、、、日本の会社ですし、まだ日本国内の比率の方が高いと思うので、20%くらいでしょうか?加えてカーシェア等他の事業で5%くらいだとすると、日本国内の売り上げは、15兆円くらいでしょうか。すると新車の市場規模が75兆円くらいになるので、桁一つ違うくらいになりました。まだ少し中古車台数との差が大きく離れている気がしますが、、」
「そうだね。まず自動車販売の海外比率は50%くらいじゃないかな。あと、車関係以外にも金融事業もやってるから、その分も差し引いて比較するとだいたい桁一つくらいの違いになるんじゃないかな。まぁフェルミ推定はこれくらいにして、次はあるディーラーの販売台数を増やす施策を考えようか。」
(以下略)

という感じで、中古車のフェルミ推定をやってるはずが、トヨタの売上構成の話に移っていました(笑)

こんなぼろぼろのやり取りですが、この面接は通過しています。このことからも大事なのはやはり、最初の計算結果ではなく、ディスカッションでいかに柔軟に返答できるかだと思います。

以上、いかがでしたでしょうか?
今回も非常に文字数が多くなりましたが、最後までお読みくださりありがとうございました!
参考になったよ!と言う方はぜひ良いねボタンをお願いします!

また、他にもフェルミ推定の例題を解説していますので、気になった方は是非確認してみてください!

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